避難行動要支援者に関する定義と対策

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hoshi2man

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1986年8月26日、おとめ座、五黄の寅、O型、千葉県富津市出身、印西市在住、3児の父(6歳、4歳、2歳)※2021年末時点
木更津高専卒業→(編入)和歌山大学→(就職)某建設コンサルタント

自分らしい生き方とは何ぞや?と悩む30代男性。
食・農業、防災、福祉に興味あり。

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3月11日。日本人にとって忘れられない日が今年も来ました。
東日本大震災発生から11年が経ちました。
仕事柄、東日本大震災については多少の知識はあります。が、私は大きく被災した訳でもなく、足繫く現場で支援を行った訳でもありません。正直に言えば、書籍で得た被災地の方々の悲しい想いばかりが頭によぎり、心が重くなります。そんな自分ですら心が重くなる。それを考えると、東北で被災された皆さんの心中は計り知れぬものがあります。

おそらく、今年も東日本大震災に関するエピソードや被災地の現状についてはメディア等で多く報道されると思います。その点について、私がここで書いても皆さんに有益な情報を与えることは難しいと思いますので、今日は私が知ってほしい防災に関する知識を紹介したいと思います。
それは「避難行動要支援者」という言葉です。

避難行動要支援者とは?

「避難行動要支援者」という言葉を知っていますか?
まずは、正確な定義が災害対策基本法の中にあるので、紹介します。

当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの
出典:災害対策基本法 第四十九条の十第一項より抜粋

少し難しい書き方をしていますが、要は「自分1人では避難するのが難しい人、避難にあたって支援が必要な人」と考えてください。

避難行動要支援者ってどんな人たち?

では、「自分1人では避難するのが難しい人、避難にあたって支援が必要な人」って具体的にはどんな人のことを言っているの?と思いますよね。イメージしやすいのは、高齢者や障害者の方々です。ただ、避難行動要支援者が誰かというのは厳密に言うと各市町村で異なります。各市町村では、この避難行動要支援者の方々の名簿を作ることが義務付けられています。そのため、避難行動要支援者について具体的な定義を定めた上で、調査をした上で決められています。
例えば、私が住む印西市における避難行動要支援者の定義を見てみます。

千葉県印西市における避難行動要支援者の定義
避難行動要支援者とは、要配慮者のうち、災害が発生した際に自力で避難する
ことが困難であり、円滑かつ迅速な避難をするために、特に支援が必要な在宅の
人をいいます。
在宅ではなく、福祉施設や介護施設への入所、医療機関への入院をしている人
は、当該施設内で日常的な支援を受けることができることから、在宅の人を対象
としています。
市では、避難行動要支援者の要件を次のとおりとし、避難行動要支援者名簿を
作成します。
【避難行動要支援者の要件】
①世帯全員が75歳以上の高齢者(ひとり暮らし含む。)
②要介護度3、4、5の要介護認定者
③身体障害者手帳1・2級(総合等級)の第1種を所持する身体障害者(心臓
機能障害のみで該当する者は除く。)
④療育手帳を所持する知的障害者
⑤精神障害者保健福祉手帳1級所持者
⑥上記のほか、相当の支援を必要とする者

出典:印西市避難行動要支援者避難支援計画(令和2年4月,印西市)より抜粋

先ほど書いたとおり、この定義が市町村ごとに異なります。避難行動要支援者の定義(厳密に言うと異なる)に関する調査があります。以下の図をご覧ください。身体障害、要介護認定、知的障害、精神障害については非常に多くの自治体で指定していることがわかります。

出典:避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(令和3年5月改定)参考資料(第Ⅴ部)

その他、印西市の場合、要介護度3~5としていますが、要介護度1,2を含める自治体もあります。このように要介護度の程度も自治体によって異なるので、各市町村異なる定義となります。

また、印西市の避難行動要支援者の定義にある「⑥上記のほか、相当の支援を必要とする者」という要件は比較的多くの市町村で採用しており、これを設定しておくことにより、幅広く多くの人の支援を行える基準としています。

ちなみに、災害対策基本法の中に出てくる「要配慮者」というのは、印西市において以下のように定められています。

千葉県印西市における要配慮者の定義
要配慮者とは、災害が発生した際に、必要となる情報を的確に把握し、災害か
ら身を守るために安全な場所に避難するなど、適切な避難行動をとることが困難
な人や避難所での避難生活に一定の配慮及び支援が必要な人をいいます。
市では、要配慮者を次のとおりとします。
高齢者:ひとり暮らしの高齢者、高齢者世帯、要介護高齢者 など
障がい者:視覚・聴覚・言語・肢体不自由・内部障害、知的障害、精神障害など
状況によって配慮が必要となる者: 乳幼児、妊婦、外国人 など

出典:印西市避難行動要支援者避難支援計画(令和2年4月,印西市)より抜粋

要配慮者は、避難行動要支援者よりも広い範囲の人たちが該当します。
イメージとしては、避難に支援が必要がありそうな人たちを広く拾い上げているのが「要配慮者」、要配慮者のうち、各市町村が定める定義に従い支援が必要と判断した人たちを「避難行動要支援者」と呼びます。要配慮者は幅広い概念のため、概ね全国の市町村において近い範囲を指していると考えてもらって良いと思います。

要配慮者と避難行動要支援者の関係イメージ図
出典:岡山県津山市ホームページ https://www.city.tsuyama.lg.jp/life/index2.php?id=3950

避難行動要支援者のために出来ることは?

避難行動要支援者の人たちがどんな人たちが少しイメージできたところで、その避難行動要支援者のためにある防災対策について触れたいと思います。防災対策を考えるときに、まず避難行動要支援者が「施設に入所している」か、「自宅で生活している」かによって、主な防災対策が変わってきます。

施設に入所している方のための防災対策

高齢者のための介護施設や障害者のためのグループホームのような福祉施設に、避難行動要支援者が入所している場合、その生活の中心は施設で過ごすことになります。そのため、施設に入所している方のための主な防災対策として挙げられるのが「業務継続計画」です。
業務継続計画というのは、今回の場合で言えば、福祉施設が災害時にも業務を継続すること、施設に入所している方の生活にかかわる支援を継続するための防災計画です。業務継続計画には、災害時にもその機能を継続するため、災害対応の方針、役割分担、連絡先、必要な物資等の事前対策、施設で行う訓練・研修等の内容を定めたものです。詳しくは、厚生労働省が作成のためのガイドラインを公表しているので、興味ある方は、そちらをご覧ください。

自然災害発生時の業務継続ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000749543.pdf

業務継続計画は、行政や民間企業等も必要に応じて作成しています。もし、興味あれば、ご自身が住む自治体や働く会社の業務継続計画も見てみると面白いと思います。

自宅で生活している方のための防災対策

自宅で生活している避難行動要支援者のための主な防災対策として挙げられるのが「個別避難計画(以下、個別計画と言います)」です。これは、避難行動要支援者ひとりひとりに対して作成されるものです。これも避難行動要支援者の定義と同様に各市町村によって作成方法や内容が異なります。印西市の場合の計画内容を見てみましょう。

個別計画の内容
個別計画は、次の具体的な支援方法について話し合って決めます。
①災害発生時に避難支援等を行う人(避難支援者)
②避難支援等の方法や避難経路、避難場所
③避難支援等を行うに当たっての留意点(情報伝達、避難誘導等)
④本人が不在で連絡が取れない時の対応(緊急連絡先等)
⑤その他、要支援者の身体的特性等により必要と考えられる事項

出典:印西市避難行動要支援者避難支援計画(令和2年4月,印西市)より抜粋

ここに書かれている中で最も重要な部分なんだと思いますか?
私は「個別計画は、次の具体的な支援方法について話し合って決めます。」と考えています。

個別計画の内容自体が重要なのはもちろんですが、それ以上に作成するためのプロセスが重要な意味を持ちます。避難行動要支援者は「自分1人では避難するのが難しい人、避難にあたって支援が必要な人」です。つまり、いくら避難行動要支援者自身がひとりで素晴らしい計画を立てても、実際の災害時に支援する方を確保し、支援者が適切な行動をとれなければ意味がないのです。そのため、個別計画を作成するプロセスにおいて支援者との関係をつくり、理解を深めることが、結果として出来る紙の個別避難計画よりも重要な意味を持つと考えています。

その他の対策

避難行動要支援者の主な防災対策として「業務継続計画」と「個別避難計画」を紹介しました。ただ、もちろん必要な対策はこれだけではなく、避難行動要支援者の自助対策や訓練・研修等様々な防災対策があります。中でも今後、特に重要な位置づけとなるのが「地区防災計画」と呼ばれるものです。近年の災害の激甚化、頻発により、行政による災害支援の限界が見えており、住民自身による防災力向上が叫ばれています。ただ、避難行動要支援者が避難するには支援者の助けが必要です。そして、実際には避難行動要支援者ではない一般の方も被災するとひとりでは避難できない可能性も十分にあります。他人ごとではないのです!!そんな時のために、近所の皆と一緒に避難する、助け合うための計画が地区防災計画です。この地区防災計画は、その地域に応じて内容が異なります。もっと言えば、計画という書類ができていなくても地域での防災活動をできていること自体を地区防災計画と呼ぶこともできます。地区防災計画も国のホームページで詳細紹介されているので、興味ある方はご覧ください。

みんなでつくる地区防災計画 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/

自分や家族が該当するかもと思ったら・・・

ここまで長文で色々説明してきましたが、読んでみて「自分や家族は避難行動要支援者かもしれない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。そんな時、まずは第一歩として、ご自身がお住まいの福祉担当部署もしくは防災担当部署に連絡してみましょう。市に自分が該当するかもしれないと相談して、もし該当してそうであれば、市が作成している「避難行動要支援者名簿」というものに掲載してもらえます。ここに掲載されることによって、市から避難行動要支援者と認識してもらい、個別計画等の対策の対象となります。例えば、印西市では、下記のホームページで避難行動要支援者の支援について紹介されています。

避難行動要支援者制度(印西市役所福祉部社会福祉課厚生係担当)
https://www.city.inzai.lg.jp/0000011609.html

今回は、過去一番長いブログとなりました。。。分かりづらい所多々あると思いますが、ご容赦ください。また、今回ご紹介した業務継続計画や個別計画、地区防災計画等、機会があれば、この辺りを個別に紹介するブログもかいてみたいと考えています。

読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

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1986年8月26日、おとめ座、五黄の寅、O型、千葉県富津市出身、印西市在住、3児の父(6歳、4歳、2歳)※2021年末時点
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