前回のブログ記事に引き続き、森林環境税について書いていきます。
前回は、使う側(行政)の視点で森林環境譲与税の使い道の概要を整理しました。
今回は、さらに具体的な取り組み事例を紹介していきたいと思います。取り組み事例は林野庁のホームページにて取組事例集が公表されていたので、その事例の中から、星野の独断と偏見でいくつか紹介していきたいと思います!
もし、もっとたくさん、詳しく知りたい!という方は、取組事例集を見てください。
林野庁ホームページ
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html?msclkid=f8732b5ac1f311eca76e860ddf15ab58
目次
森林整備にかかわる取組事例①:重要インフラ施設への倒木被害防止に係る森林整備(千葉県君津市)
令和2年度に以下2つの取組を実施しています。
房総半島台風で大きな被害を受けた市町村ならではの取組事例ですね。災害で木が倒れてから直すという発想ではなく、倒れることを想定して危険個所を減らそうという発想で、予防対策としては良い視点なのではと思います。事業費として2千万円以上をつぎ込んでいることからも君津市が力を入れていたことが読み取れます。ただ、この事業の効果が災害時にどの程度発揮されるのか、実態として危険個所を大きく減らせたのかどうかという点に関しては気になるところです。
森林整備にかかわる取組事例②:航空レーザ測量成果を活用した森林境界明確化等(山形県米沢市)
他の市町村が森林整備そのものや意向調査等に予算を割いている例が多い中、今後、森林を維持管理していくうえでの基礎情報、仕組み構築に力を入れた取り組みということで注目しました。
具体的には、令和元年度に実施した航空レーザ測量及び森林資源解析のモデル地区内の1林班を対象に、森林境界明確化の実施と、原則、所有者が山林に入らずに行うことができる森林境界明確化の手法確立のため、素図の作成及び地元への事業概要説明を行っています。
今後、林業に関する人手不足が加速することも見越して、効率的に森林整備を進めるための手法確立を進めることは非常に有意義な取り組みであると感じました。
森林整備にかかわる取組事例③:小規模森林や生活保全林の整備への支援による森林整備の推進(福井県福井市)
今回の森林整備の分野だけではありませんが、行政が事業を進める上で気になるのは、エンドユーザーである住民が恩恵を受けられるのか。特に、事業者で言えば中小企業のような数多くあるが、支援の手が届きにくい方々です。
この福井市の取組は、小規模森林や生活保全林を整備するにあたり、森林所有者が整備を依頼するであろう林業経営体や自伐林家等への補助を行うことにより、幅ひろい範囲をカバーしようとしていると感じました。助成制度がどのようなものかまで調べられていないので実態はわかりませんが、考え方としては対象を幅広く設定でき、エンドユーザーである住民の意見を反映しやすい形なのではと思いました。
人材育成・確保にかかわる取組事例:基幹産業を担う人材育成支援(岐阜県東白川村)
多くの市町村が研修会等の開催に予算を割く中で、人材の確保にあたり、林業事業体に対して補助を行う形をとっている点に注目しました。
村の基幹産業である、林業、製材業等などの伝統的な産業の衰退を防ぐため、全国からIターン、Uターン者を募り、基幹産業の事業所に就業した場合、事業所に技術習得研修受講費相当分として補助金を交付しているようです。具体的な補助内容は下記の図を参照ください。
林業事業体にお金の支援をすることで本当に人材が定着するのか、という点については賛否があるとは思いますが、もし自分が林業に従事したいと思った場合には嬉しい制度だと感じました。
木材利用・普及啓発にかかわる取組事例:高野町産材を使用した木育の取組(和歌山県高野町)
公共施設の木材利用や木材を使った加工品による普及啓発等が多い中、木育という形で、木の大切さを根付かせようとする取組に注目しました。
中学生を対象に木のぬくもりや温かみを感じてもらうために木育の授業を行い、高野産材を使用した机の天板及び物入れを生徒自らが組立てて、中学3年間で使用する事業というのは面白いと感じました。また、高野町産の木材を使用した木製おもちゃを町で生まれた子供に誕生祝い品としてプレゼントする事業というのも案外嬉しいのではと思いました。
自治体間連携にかかわる取組事例:木曽郡6町村と木曽広域連合の連携による森林経営管理制度への取組(長野県木曽郡上松町・南木曽町・木曽町・木祖村・王滝村・大桑村)
小さい市町村では予算や知識、技術が不足するという問題が出ることが良くあります。そんな中、複数の市町村で組織を組み、目的達成に向けて一体的に動くというのは効率的であり、これからの日本に合っている取組だと思いました。
読んでくれた皆さん、ありがとうございました。